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子犬が原因で起きた多剤耐性キャンピロバクターのアウトブレイク(米国)

キャンピロバクター腸炎は米国で年間約130万人が発症している。2017年8月CDCはオハイオ州にペットショップAに関連して6例のキャンピロバクター腸炎が報告されたことをきっかけに、米国全土にわたり、ペットショップに関わる人、子犬に対して調査を行った。2016年1月~2018年の2月にかけて国内全体では18州に渡り、29名のペットショップの店員を含んだ118人が下痢症状を訴えた。そのうち24%(26名)が入院加療を行った。死亡者は認めなかった。感染者のうち99%は犬との接触があり、そのうち95%はペットショップの子犬との接触を認めた。

州および地域の農務、健康省は20のペットショップを訪れ調査を行った。149匹の子犬のうち95%が一度以上抗菌薬の使用歴があった。治療の適応を評価できた134匹(94%)において55%は予防内服のみであった。予防と治療で使用したのが38%で、治療目的で使用したのは1%であった。抗菌薬使用期間の中央値は15日で、メトロニダゾール、sulfadimethoxine、ドキシサイクリン、アジスロマイシンの使用が多く81%を占めた。

51名の患者および23匹の子犬より Campylobacter jenuniを検出した。そのうち10人の人および8匹の子犬から検出された Campylobacterはアジスロマイシン、シプロフロキサシン、エリスロマイシン、テリスロマイシンおよびテトラサイクリンに耐性を認めた。加え18例中16例はゲンタマイシンに耐性を認めた。6つのペットショップ会社がアウトブレイクに関連していた。このアウトブレイクにより子犬が多剤耐性キャンピロバクター感染症の原因になること。ペットの抗菌薬使用に対して注意を払う必要がある。

写真出典:Wikimedia Commons

Morb Mortal Wkly Rep 2018;67:1032–1035.

#人畜共通感染症による耐性菌の出現はずっと懸念されており、特に家畜の抗菌薬の投与については制限をかけたりしてきましたが、ペットに対する抗菌薬投与による耐性菌の報告が印象的でした。ペットに対しても抗菌薬の適正使用が必要ですね。

結核ワクチンの効果 (Phase2B control trial)

世界人口の約1/4の人が結核に感染していると推測され、結核が全世界で最も多い感染症による死因である。現在行われている結核ワクチンのトライアルは、結核感染者にワクチンを施行することで病気の発症を予防でき、それにより感染の伝播を防ぐ目的で行われている。
M72/AS01E (GlaxoSmithKline)のワクチンは、結核菌の抗原(Mtb39A and Mtb32A)に由来するM72 recombinant fusion proteinを含んでおり、マラリアワクチンの成分であるASO1 adjuvant systemを使用している。Phase2の研究では、このワクチンは、安全性を示した。またHIV,非HIV患者の活動性および潜在性結核患者において特異的なinterferon-γの産生を引き出すことが示されており、体性および細胞性免疫を誘導した。今回Phase2bのトライアルでは、非HIVの潜在性結核患者対象にワクチンの安全性、有効性の評価を行った。

Phase2bのRandomized, double-blind, placebo-controlled trialがアフリカのケニア、南アフリカ、ザンビアで実施された。18-50歳の非HIV感染者のうちInterferonγ release assayで確定した潜在性結核患者を対象とした。1786名のワクチン群と1787名のプラセボ群に割り振られ3年間観察を行った。ワクチン群のうち10名が、プラセボでは22名が活動性結核と診断された(incidence, 0.3 cases vs. 0.6 cases per 100 person-years)。Vaccine efficacyは54%であった。30日間での副作用はワクチン群では67.4%、非ワクチン群では45.4%であった。重症の副作用は両者で差を認めなかった。

写真出典:Wikimedia Commons

N Engl J Med 2018 Sep 25

#結果だけをみると54%のVaccine efficacyですが、判断は難しそうです。結核のワクチンを評価するスタディは組みにくいですが、潜在性結核患者に対する予防効果を評価基準とするのは少し微妙なように思います。感染していない人に対してワクチン接種をした際にはどれだけ効果はあるんでしょうか。引き続き注目したいと思います。

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マヒドン大学熱帯医学短期研修の講義を中心に、熱帯医学、渡航医学、感染症に関する動画や、マラリアや消化管寄生虫クイズなど、わかりやすい教材で効率的に学習できます!以下、eラーニングの一部です。
※GMSeラーニングは、会員限定のコンテンツです。

1)マラリア鑑別のポイント
2)消化管寄生虫症 鑑別
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「消化管寄生虫症概論」Prof.Yaowalarkです。

GMSe-ラーニングでは、マラリアや消化管寄生虫など、顕微鏡での特徴をクイズ形式で解説いたします。典型例を分かりやすく原虫別に出題していきます。これらの画像は、「マヒドン大学熱帯医学部出版(英語)の寄生虫アトラス」から抜粋したものと、実際の顕微鏡の画像を混在して入れています。実臨床では教科書画像のように分かりやすい画像とは限らないので、注意が必要です。
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